産業用ロボット

産業用ロボットの世界

産業用ロボット

 

ものづくりのキープレイヤー

 

現在、ロボットの中で大きな市場を確立しているのが産業用ロボットです。

 

代表的なのはアーム型ロボットと呼ばれるもので、人間の腕や手に類似した機構をもつだけのシンプルなマシンですが、

 

「教えた動作をプログラムとして記憶して再生する」

 

というティーチングプレイバック機能によって多彩な働き方ができるため、溶接や塗装、加工・組立、搬送といった生産工程の幅広い分野で活躍できるようになりました。

 

ちなみに工場には他にもさまざまな「自動的に動く機械」が導入されていますが、特定の作業しかできない専用機と違い、産業用ロボットの場合はプログラミングによって作業内容を変えられる多様性のある機械であることが最大の特色です。

 

 

また、ある程度の自律性をもたせることで

 

「状況に合わせて力加減を調整する」

 

といった自動制御ができるようになり、このことも活用領域の拡大につながりました。

 

 

産業用ロボットは機構の仕組みによって、主に次のように分類できます(分類の仕方はメーカーなどによって異なります)。

 

垂直多関節ロボット
水平多関節ロボット(スカラロボット)
直角座標ロボット
パラレルリンクロボット

 

多関節ロボットは人間の関節にあたる「軸」の数によって3軸、4軸、5軸、6軸……と分けられます。

 

軸数が多いほど自由度が増し、より複雑な動きができますが、その分、制御が難しくなるのはいうまでもありません。

 

また、垂直と水平は軸の向きを表します。

 

直角座標ロボットはガントリーロボットともいい、3本の直交スライド軸により3次元の動きをします。

 

パラレルリンクロボットは複数の軸を組み合わせたパラレルメカニズムによって多関節型ロボットより高速動作を可能にしたものです。


産業用ロボット開発の歴史

産業用ロボット

 

この産業用ロボットのコンセプトは、アメリカのジョージ・デヴォル(George C.Devol )が1954年に出願した特許「Programmed ArtiCle Transfer」のなかで初めて示されました。

 

そのころの米国ではさまざまな産業への機械導入が進んでおり、たとえば農業分野では農機による作業の効率化によって1940年からの20年間で従事者数が3分の1に減少したといわれています。

 

同じように工業分野でも自動化のニーズはあったものの、工場で必要とされる作業は農業より緻密なものが多かったため、それをすべて機械化するのは難しいと思われていました。

 

しかし1950年代に入るとプログラム内蔵式のコンピュータが実用化され、この機能を使えば人の動きを真似させるティーチングプレイバックが可能になります。

 

つまり、デヴォルの発想にはそんな時代の社会的背景と技術的背景があったのです。

 

そして1958年に米国のコンソリデイテッド・コントロール社(CC)がプロトタイプの産業用ロボットを発表したのに続き、1962年にはユニメーション社とAMF社が実用第1号機を製作します。

 

ちなみに手塚治虫が初めてアトムを主人公にしたマンガを描いたのは1951年のことですが、そのころの日本では米国ほど機械化の要望が高くなかったのか、産業用ロボットという発想はあまり生まれませんでした。

 

それでも1960年代の高度成長期に入ると労働力不足が深刻になってきたことからロボットの輸入が始まり、やがて国内メーカーも積極的に開発を進めていくようになるのです。

 

もともと電気機器や精密機械の分野で高い技術をもっていた日本のメーカーはすぐに実力を発揮し、特に1980年代に入ると現在の産業用ロボットに近い電動式の多関節型や座標型ロボットを次々と製品化していきます。

 

やがて「世界中で活躍する産業用ロボットの3分の2は日本製」といわれるほどになるのです。すごいですね。


ロボットメーカーの裾野は広い 

部品からシステムまで

 

アーム型ロボットは関節をゆっくり動かす必要がありますが、動力源であるモータは、ある程度、速く回転させないと充分な力(トルク)が得られません。

 

このため歯車などを組み合わせた精密減速機という装置を用いてアームの動きに合わせる必要があります。

 

そして現在、世界中の産業用ロボットに搭載されている精密減速機のほとんどは日本のナブテスコハーモニック・ドライブ・システムズという機械メー力−が製造しており、日本の技術がロボットの大切な部分を支えているのです。

 

細かい作業をする産業用ロボットでは、たとえば
「3メートル以上ある大型アームの先端を0.1ミリメートル以下の誤差でコントロールしなければならない」
といった厳しい条件が要求されます。

 

このため、パーツーつをとっても供給できるメーカーは限られてきます。
逆にいえば、技術力のある会社にとっては大きなビジネスが期待できるのです。

 

ロボットは機械、電子・電気、材料、情報通信など幅広い技術を組み合わせた統合システムです。
したがって、それぞれの分野ごとにロボット産業を支える有力な企業が存在しています。

 

日本はもともと多様な技術を有する国であるだけでなく、ロボット産業が早くから育ったことにより、有力な「パーツ」メーカーが多数存在します。
したがって、その強みを活かし、これからもロボット開発では世界の先頭を走っていくでしょう。

 

世界でも最大規模のロボット関連の展示会である「国際ロボット展」における出展製品は、非常に幅広い分野に及んでいます。

 

歯車、ねじ、ジョイント(継ぎ手)、ケーブル(電線)といった一般的な機械部品のメー力−までが出展するのは、ロボットには従来とは異なる特別な性能が求められるからであり、また今後のロボット市場の拡大に期待しているからなのです。

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